Adlangとしての活動の始まりは、とても単純でした。
ただ、布が美しかった。
理由はなく、ただ「好きだ」と思ったことがすべてでした。
当初は、その背景や作り手のことを、
深く考えていたわけではありません。
けれど、心を惹かれたものほど、
自然と
「どこから来たのか」
「誰が作っているのか」
を知りたくなるものだと思います。
取引を重ね、インドの布や手仕事に触れるうちに、
文化や作り手の声が、少しずつ耳に入るようになりました。
その中で、何気なく聞いた一言が、
強く心に残りました。
「この仕事は、あまり人気がないから」
——人気がない?
どういうことだろう。
なぜだろう、と考えずにはいられませんでした。
理由を辿っていくと、
賃金が高いとは言えず、
時間と労力がかかるわりに、報われにくい現実があることを知りました。
さらに、インドの商取引の現実として、
一つひとつの仕事の丁寧さよりも、
一定の数量を仕上げなければ賃金が下がってしまう
仕組みがあり、結果として小さな仕事や、
時間を要する丁寧な手仕事ほど、
選ばれにくくなってしまう現実も、
少しずつ見えてきました。
布の美しさだけを見ていた頃には、
想像もしなかった背景でした。
その頃から、心に何かが引っかかるようになりました。
ただ「好き」で扱っているだけでは、
何かを変えられる力はないかもしれない。
けれど、
この仕事を選んだのなら、
何もできないわけではないのではないか、と。
その頃から、
「では、どうすればいいのだろう」と
考えるようになりました。
はじめに思い浮かんだのは、
フェアトレードという仕組みでした。
名前は聞いたことがあっても、
自分の仕事として向き合うのは、
それが初めてだったのです。
フェアトレードという仕組みが、
職人たちに自信や誇りをもたらしてきた側面が
あることも、私は理解しています。
一方で、価格が上がることで、
その負担をそのままお客様に委ねてしまう形には、
どこか納得できない気持ちもありました。
高く買い、高く売る。
それは、一つの正解かもしれません。
けれど、私が目指したのは、
職人にも無理をさせず、
お客様にも無理をさせない場所でした。
たとえ数が少なくても、
一つひとつの仕事に誠実に向き合い、
質と技術を磨き続けることにこそ、
本来の価値があるのではないか。
そうした仕事であれば、
つくる人も、自分の仕事に誇りを持ち続けられるはずだと
思うようになりました。
一方で、
インドの職人と日本の職人では、
文化や生活の違いから、
同じ形では成り立たない現実があることも、
次第に理解するようになりました。
これは、日本の職人文化を、
見聞きしながら育ってきた、
日本人としての感覚なのかもしれません。
自分自身が職人であるわけではありませんが、
誇りを持ってものづくりに向き合う人たちの姿を、
当たり前の価値観として知ってきました。
そうした姿勢こそが、
ものづくりを長く支えてきたのだと思っています。
その頃から、
なんとなく考えるようになった私の夢があります。
それは、
宿舎と工房が一体となった場所をつくることです。
価格の高さに依存するのではなく、
仕事そのものに誇りを持ち、
安心して技術を磨き続けられる土台をつくりたい。
衣・食・住といった生活の基盤が守られてこそ、
職人は自分の手仕事と向き合い直し、
技術を深め、
次の世代へと受け継いでいくことができるのではないか。
私は、そう考えました。
もちろん、これは簡単なことではありません。
文化や法律、価値観の違いもあり、
インドにそうした場所をつくることは、
私にとって大きな夢であり、挑戦です。
それでも、
日本のお客様に過度な価格的負担をお願い
するのではなく、ものづくりに向き合う姿勢や、
品質に対する考え方そのものを丁寧に伝え、
理解と共感の上で、きちんと支え合える
サポート体制を整えていきたいと考えています。
せっかくの美しい手仕事が、
大量生産の方向へ向かってしまうのではなく、
質と技術を磨くことで、
誇りを持って作り続けられる仕事であってほしい。
そうあるべきだと、私は思っています。
お客様が選択したものが、
誰かの辛さの上に成り立つものではなく、
安心して手に取っていただけるものでありたい。
そう、心から願っています。
この仕事は、
つくる人と、使う人の間に立ち、
価値と現実のバランスを取り続ける仕事です。
この立ち位置は、
ビジネスとしても、
文化を育てていくうえでも、
意味のある場所だと、私は思っています。
お客様が選んでくださる一つひとつが、
遠く離れた場所で、
無理のない仕事や、
続いていく技術につながっていく。
その積み重ねの先に、
私の思い描く場所も、
少しずつ輪郭を持っていくのだと思います。
美しいものは、
誰かの辛さの上ではなく、
誰かの誇りの上に存在してほしい。
ただ「好き」だった気持ちから始まり、
知ることで生まれた違和感が、
今は、この仕事を続けるための
静かな信念になっています。
Adlang 店主あかね
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